静岡県はリニア建設に反対しているが、実はかなりの利益を被る理由
みなさん、こんにちは!
本日も読んでくださってありがとうございます
昨今、コロナウイルスの感染拡大がなかなか収まらないので、外出自粛をしている方が多いと思います。
暗いニュースばっかりですが、来る2027年のリニア新幹線の品川ー名古屋間の開業について、考えてみました。
- 待ったをかけた静岡県
- 受益者負担の原則
- 実は静岡県がリニアで一番利益を得ることができるかも
- リニアが開通しても、JR側の利益は増えない
- 受益者負担の原則になっていない
- もう一度受益者負担の原則に立ち返って、民意に左右されない第三者委員会が仲裁すべき
待ったをかけた静岡県
工事が始まってから、建設は順調に進んでいたかと思われていました。
しかし、突然静岡県が、建設に伴う大井川水系の水量の減少が生態系に及ぼす影響の負担をJR東海に求め、静岡県内の工事をストップさせました。
静岡県内の建設状況が今のままだと、リニアは2027年に間に合わないと考えられています。
しかし、JR東海は静岡の声にはなかなか応えません。
この構図は一見、国を味方につけたカネの亡者のJR東海側が、立場が弱く、途中駅さえ建設してもらえない静岡県をいじめているかのように見えます。
そのため、国民の同情が買われて一時期話題となり、JR東海側がバッシングされたこともありました。
さて、本当に100パーセントJRが悪いのか、思索していきたいと思います。
受益者負担の原則
公共事業では、様々な企業だけでなく、国やその地域の自治体も関わります。
公共事業を行おうとするときには、誰がどれだけ負担すべきかがよく議論されます。
そして、よりたくさん利益を被る者が、より多く負担します。
高速道路を例にあげましょう。
新東名高速が開通したら、誰が一番得をするのでしょうか。
国か、高速道路が通る地元自治体か。
もちろん、国ですね。
新東名高速を使うであろう多くの自動車は、地元の車よりも、全国から乗り入れてくる自動車のほうが多いことが想定さていれます。
そのため、全国の国民の税金を財源として、建設費の多くが負担されます。
もちろん、地元自治体もいくらか利益を被りますので、いくらかは負担はしますが、やはり国からの出資が大半になります。
一方、日本で一番渋滞を生み出している高速道路をご存知ですか?
阪神高速の神戸線です。
渋滞する神戸線を避けようと、多くの車が下道に降りますので、ラッシュ時間は神戸の街中の道も大変混みます。
この阪神高速神戸線の渋滞を解消するために、神戸港をぶち抜く6車線の新しい高速道路(湾岸線)が今建設されています。
その道路が完成したら、誰が一番利益を被るでしょうか?
神戸市か、兵庫県か、国か。
神戸線の渋滞が解消したら、神戸線を避けて下道を走っていた車は神戸線を通るようになり、神戸の街中の渋滞が解消されます。
従って、最大の受益者は神戸市となり、現に湾岸線建設の費用は、多くが神戸市民の税金で賄われています。
しかし、阪神間の交通がスムーズになることによる兵庫県や国への経済効果も大きいので、国と兵庫県もそれなりに負担しています。
実は静岡県がリニアで一番利益を得ることができるかも
静岡県はリニアの途中駅がなく、建設工事で生態系に悪影響が及ぼされる可能性もあります。
リニア新幹線そのものから得られる直接的な利益は、リニア区間の建設現場の雇用が生まれることくらいです。
しかし、ここで無視してはいけないことがあります。
既存の東海道新幹線です。
現在の東海道新幹線は、のぞみ主体のダイヤです。
つまり、ほとんどの列車が静岡を通過します。
静岡には東海道新幹線の駅が7つもあるのに、ほとんどの列車は全駅に止まりません。
リニアが開通したら、どうなるのでしょうか?
これまでにのぞみを利用していた客層は、みんなリニアを使うようになります。
従って、東海道新幹線は静岡にちゃんと止まるひかりやこだまが主体のダイヤになるのです。
東海道新幹線がひかり・こだま主体のダイヤになれば、一番得をするのは、県内に7つもの新幹線駅をもつ静岡県なのです!
なので、静岡県はリニア開通による直接的な利益を被ることはできませんが、間接的な利益も含めたら、リニアが通る県では、もしかしたら一番得をする県かもしれません。
リニアが開通しても、JR側の利益は増えない
一方で、リニアが開通してもJR東海にはあまり利益はありません。
それは、リニアの利用客の多くはそれまでにのぞみを使っていた客層だと見込まれていて、リニア開通そのものによる売上高はあまり増えないからです。
たしかに航空機より競争優位となり、航空機から一部のお客さんが移ることも考えられますが、それだけではリニアへの投資は回収できません。
では、どう売上を増やすかというと、1つの可能性として空いた東海道新幹線を活用することです。
つまり、静岡を題材にした観光パッケージを販売して観光客に新幹線を使ってもらったり、静岡県で不動産を開発して首都圏や中京圏への新幹線通勤客を増やすのが一番の得策です。
ここでもまた、静岡県が一番の受益者になります。
受益者負担の原則になっていない
知っている方も多いかとは思いますが、リニアの建設費はすべてJR東海が負担します。
おそらく、政治的な駆け引きに巻き込まれたくなかったので、国を排除したのかと思います。
しかし、国もリニア開通によって、東京ー名古屋間の移動がスムーズになり、ひいては国全体へ利益が及ぶことをわかっているので、減税などでJR東海の支援をするつもりです。
それでも、JR東海にとってリニアだけでは大して利益が増えないにもかかわらず、JR東海が最大の負担者であることに変わりはありません。
そこで、間接的にかなり恩恵を被るであろう静岡県が、水問題を提起してきてJR東海にさらなる負担を求めました。
リニア開通によってそこまで利益が増えないJR東海は、リニア開通によってかなり利益を得るであろう静岡県には、そう簡単に応じることができません。
これが、JR東海がなかなか静岡県に対してしっかりした補償をできない理由なのです。
もう一度受益者負担の原則に立ち返って、民意に左右されない第三者委員会が仲裁すべき
これは決して、悪徳企業Vs正義の民衆という構図ではないということをわかりいただけたかと思います。
1つの企業主導で数兆円規模の公共事業が行われることは前代未聞です。
JR東海が素早いリニア着工のために政治の駆け引きから手を引いたのは英断です。
しかし、そのデメリットとして受益者負担の原則から外れてしまい、今回のリニア水問題が起こってしまったのではないかと僕は考えています。
静岡県側の主張が支持されている理由の一つとして、おそらく下克上に対する人間の同情心があることが言えます。
力がなく、立場が下の正義感を持った人間が、力があって立場が上の悪徳な人間や組織に立ち向かうストーリーを想像してみてください。
人気映画は、そのようなストーリーで展開されている映画も多いのではないでしょうか。
つまり、大衆にウケがよいんです。
マスコミが、このリニア水問題を無理やりその構図に当てはめれば、大衆から注目され新聞や記事がよく読まれますし、立場が下の者、つまり静岡県側も国民から同情を買いやすいです。
このようなマスコミの手法に騙されないために、私たちはもっと勉強して、情報を取捨選択できるようになって、質の良い情報を残して社会問題を考えなければなりません。
このリニア水問題については、一部の者は国に仲裁を期待しています。
しかし、国の政府もまた権力があるがゆえ、悪者のほうにされやすいです。
そこで、民意に左右されない第三者委員会を作って、受益者負担の原則に立ち戻って議論を進めるべきだと僕は思います。
本日も読んでくださいましてありがとうございました。